2011/05/12

機動戦士ガンダムSEED C.E.73-STARGAZER-

機動戦士ガンダムSEED C.E.73-STARGAZER- [DVD]

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 ガンダム作品群がすごいのは、すでに原作者、個人の作品ではなくなっているということだ。アニメからジャンルを飛び越え、次々と監督が変わりつつも、確かに「ガンダム」という名前のついた作品として成立していく。不思議なことだが、連続性、一貫性みたいなものができている。
 すべての作品群に「矢立 肇」が、サンライズのアニメーション作品企画部が用いる共同ペンネームとして添えられている。仏陀の死後も、「如是我聞」「私はこう仏の話を聞いた」として数限りのない仏典が成立したのと同じように、時代と空間、そして人格までも超えて矢立肇の作品が、未来永劫、誕生していくのかもしれない。


 この作品は西澤晋監督によるガンダム作品の最後に作られたOVAナチュラル対コーディネーターに模せられた人種間戦争と、戦争の道具ととして育てられる「少年兵」の問題に焦点が当たっている。TV放映ではないから、残酷な描写が多用され、「非人間性」ということがより鮮明に表現できている。
 その意味で、敵味方に分かれて殺し合いをした二人が共に助け合い、兵士として育てられる少年を守ろうとした大人たちの記憶がフラッシュバックのように描かれるラストシーンは、とても感動的になった。西澤監督がガンダムを通してなにを伝えたかったのか、なにを描こうとしていたのかがよく分かる作品になっている。まさに、これこそがガンダム、だと思う。