機動戦士ガンダムSEED DESTINY

機動戦士ガンダムSEED DESTINY 10 [DVD]

機動戦士ガンダムSEED DESTINY 10 [DVD]

どういう最終話になるのか、注目していました。で、見終わって、それなりに感慨に浸っております。
宇宙に進出しても、戦争が絶えない未来において、強国の指導者(ギルバート・デュランダル議長)が「デスティニープラン」なるものを全人類に導入しようとします。それは、遺伝子を解析、操作することによって、一人一人の職業、生活、つまり「運命」そのものまでも出生時から決めてしまうというシステムでした。これはどうも、江崎玲於奈氏が、2000年の教育改革国民会議で「いずれは就学時に遺伝子検査を行い、それぞれの子供の遺伝情報に見合った教育をする形になって行くだろう」と発言した問題を想定していると、私は思います。斎藤貴男のインタビューも読んでください。このプランの導入による完璧な管理社会での平和を望むのか、それともそれを拒否して平和を模索する戦いを続けていくのかの選択が、最終回にあったわけです。
もう一つ、この新ガンダムシリーズで取り上げられているのが「クローン」という問題です。(「本物と偽者」というテーマは、ラクス・クラインミーア・キャンベルの関係でもあり、今作ではかなり強烈に描かれていました。このシリーズは旧ガンダムをモチーフと作られているのですが、もしかしたら、アムロ・レイを真のニュータイプとして、ニュータイプを提唱したジオン・ズム・ダイクンの子にしてアムロに及ばなかったシャア・アズナブルを、似て非なるものと捉えた?)遺伝子操作による完璧な人類として生み出された主人公キラ・ヤマトに、前作、今作ともクローンが挑むという最終回となっています。前作のクローン(ラウ・ル・クルーゼ)は「フランケンシュタイン」のように、自らを造り出した人間そのものに対する怨念の塊のような人物となっていました。今回のクローン(レイ・ザ・バレル)は、造られたという運命を受け入れ、父のごときデュランダル議長に従うという道を選んでいたのですが、最後の最後で彼と決別するという最期となりました。与えられた「運命」を受け入れるのではなく、自ら切り拓こうとするキラの考えに共感したのだと、私は解釈しました。
もう一つ、2chでも主人公キラたちの陣営が正義には見えず、デュランダルに対するテロリストとしか思えないという批判がありました。同じように本物であるラクスやキラではなく、ミーアやレイの方に惹かれるという書き込みも多かった(本物になれず、本物を守って死んでいったミーア・キャンベルは実に魅力的なキャラでした)。それだけ戦争において、正義というものは、曖昧なものだということも、この作品は描いたのだと思います。
機動戦士ガンダムSEED DESTINY」、最終話、詰め込みすぎでドタバタした印象は否めませんが、それなりに面白かった作品でした。