七人の侍

七人の侍 [DVD]

七人の侍 [DVD]

 恥ずかしながら、この名作をしっかりと見たことがなかった。
 いろいろな特集で細切れを何度も見ていて、だいたいのストーリーなどはわかっていたが、やっぱりすごかった。超名作であった。
 そしてリメイクアニメ「SAMURAI7」が、オリジナルを踏まえた、丁寧な作りになっていることが分かった。
 「七人の侍」と「SAMURAI7」を比較して、「身分」という問題に対するスポットの当て方が変わったことが興味深かった。オリジナルでは、農民と侍との間に、明確な境界が見えるのだ。両者が全く異質に描かれている。
 その結果、新作では、勝四郎と志乃の身分を越えた恋、というテーマがまったく消去されてしまった。
 そうした違いはあるけど、二つのグループが力をあわせるためのキーパーソンとなる千代蔵・チヨゾウの役割は、どちらの作品でもとても大きい。


 侍が農民と離反しそうになるシーンでの、オリジナル三船敏郎の台詞回しには、鬼気迫るものがあった。

 やい お前達 一体 百姓を何だと思ってたんだ
 仏様とでも思ってたか ああ?
 笑わしちゃいけねえや
 百姓ぐらい悪ずれした生き物はねえんだぜ(略)
 正直面して ペコペコ頭下げて 嘘をつく
 なんでもごまかす
 どっかに戦でもありゃ すぐ竹槍作って 落ち武者狩りだい
 よく聞きな 百姓ってのはな
 けちんぼで ずるくて 泣き虫で
 意地悪で間抜けで 人殺しだあ!
 ちくしょう おかしくて涙がでらあ!
 だがな こんなケダモノ 作りやがったのは一体 誰だ?
 おめえ達だよ 侍だってんだよ
 ばか野郎 ちくしょう
 戦のためには 村あ焼く 田畑踏ん潰す
 食い物は取り上げる 人夫にはこき使う
 女あさる 手向や殺す
 一体 百姓はどうすりゃいいんだ
 百姓はどうすりゃいいんだよ くそー
 ちくしょう ちくしょう

 彼の叫びを聞いた侍たちは、よく分からんが、とにかく命がけで農民を守るために戦うのだ。
 村を襲う野武士に殺された女の手から赤ん坊を抱き上げて「これはオレだ!」と千代蔵が絶叫する、有名なシーンには涙が出た。

 この映画の主人公は農民ということになっているが、私は二つの身分を越えたキャラクター、千代蔵の映画だと思った。
 こんなキャラをつくった黒澤明は、やっぱりスゴイよ、まったく!!