韓国のイメージ―戦後日本人の隣国観 (中公新書)

韓国のイメージ―戦後日本人の隣国観 (中公新書)

韓国のイメージ―戦後日本人の隣国観 (中公新書)

 youtubeからK-popに興味を持って、ソニョシデの動画を見漁った。
 これまで韓国ブームはあった。私も20年近く前に社員旅行でソウルを訪れた事もある。カラオケに行くと必ず「イムジン川」を歌う友人もいる。しかし、韓国のイメージは薄くて朧だった。なんというか主体的に隣国を知ろうとしたことがなかった。
 youtubeで垣間見ることのできるK-POPの色合いはとても興味深い。それまで「遅れている」という偏見があったのだが、アメリカの文化を独自に吸収し、民族の特色も併せ持っている。同じものを根源とするとはいえ、その受容の仕方は、たしかに日本と違っている。
 そういうこともあって、初めて韓国論をテーマとする本を手に取ることになったわけだ。
 知らなかったことも多い。占領下での在日朝鮮人の「暴動」や李承晩ラインによる日本漁船の拿捕・抑留事件が、日本人の隣国イメージに悪影響を及ぼしていること。しかし、それらの事件が起こった原因もしっかり述べられていた。
 北朝鮮に対する進歩的知識人たちの幻想も、知らないではなかったが、こうして資料として挙げられると、たしかに、あまりに甘い幻想でしかありえなかったのだと実感させられる。共産主義社会に対する、ある意味、宗教的な魔力みたいなものも感じた。
 いま、戦後から現在にいたる、日本の「負い目」と「哀れみ」という視点と、韓国の「嫌悪」と「憧れ」というそれの図式は徐々に崩れつつあるように思う。K-POPをはじめとする文化と経済の交流は、日本においては「韓流ブーム」と「嫌韓論」の対立を生んでいる。この図式が壊れてしまったら、両国の隣国へのイメージがどのように変わるのだろうか。
 そして、著者が現在、日本に帰化し、「在日」批判を展開していることを、ウィキで知った。この本を書いた上で、中立ではなくて、なんらかの態度表明をすべきことになったのだろう。この動向も見守りたいと思う。