UFOとポストモダン

UFOとポストモダン (平凡社新書)

UFOとポストモダン (平凡社新書)

 UFO文化(?)を時代時代の漠然とした「不安」の表象として分析する。
 ベトナム戦争までは現代科学技術への不安であり、冷戦終結までは「監視する国家」への不安であり、それ以降は電磁波や環境ホルモンといった確固とした定義づけのない事柄への不安と、三期に分類。
 空飛ぶ円盤、エイリアン、バミューダートライアングル、2000年問題マイナスイオンといった、一見脈絡のないアメリカ発信のあいまいな情報に一貫性を見出し正体を明らかにしていく手法は、かなりスゴイ。面白い。

 ただし、これだけじゃ、分析だけ、なんだよな。

以前なら、一般的に前提される、ある一つの「現実」に対して複数の「個人的価値観」が存在していましたが、現在はそれとは逆に、「個人的価値観」に基づいて各人が自分の好きな「現実」を選び取っていると言えるかもしれません。環境ホルモンに関する一定の見解があってそれを各個人が判断して意見が割れているわけではなく、環境ホルモンという得体の知れないものに対する各個人の多様な意見があって、その後で、それぞれ自分の意見と合致する研究者の見解に肩入れしているというのが実情に近いのではないでしょうか。

これがポストモダンであることはわかるんだが、教科書、教育基本法、そして憲法についての論義において「個人的価値観」が衝突する「現実」にはどのように向き合えばいいかが、問題なんだと思う、今は。