太陽 再考

太陽 [DVD]

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 映画を見てすぐ、レビューを書きました。監督が偉大なドストエフスキーの国の方ですから、神が人へと落ちるさまを描いたのだと。いわゆる思想的、美学的な映画なのだと解釈しました。

 先日、靖国問題についての講義を受けました。この映画で取り上げられた昭和天皇人間宣言」は、国家そのものの性格を180度転換させた大事件であったと、思い至りました。
 人間宣言以前の日本は「神の国」でした。天皇を宗教的権威と位置づけることによって国家への忠義、帰依を求め、戦争を遂行していったわけです。ですから、人間宣言によって国家神道終結し、今度は信教の自由に基づく民主主義の国へと日本は変貌を遂げた、はずでした。
 ネタバレになりますが、この映画はラジオ放送のために人間宣言を録音した技師が、自決したという話で終わります。そのとき天皇は「なんて馬鹿なことを」と悲しむのですが、桃井かおり扮する皇后は、実に意味深な表情をします。それは、神格を剥がす行為に対する怨念が込められているような表現でした。
 そんなこんななことを、再考したりしています。