十七歳の硫黄島

十七歳の硫黄島 (文春新書)

十七歳の硫黄島 (文春新書)

 硫黄島の戦いにおいて、豪をめぐらしたゲリラ戦で米軍の消耗を狙った栗林忠道中将の作戦は、後世においてそれなりに評価されている。映画「硫黄島からの手紙」でも、人命を尊重した偉人のような描かれ方がされている。
 しかし、戦闘することを許されず、武器も食料も尽きていく中で、手当てもされず、地獄のような豪の中で焼かれた兵士たちがいかに極限な状況の中で死んでいったかを知れば、あの映画も戦争を美化しているとしか言えない事になる。
 著者の秋草鶴次さんは戦闘の中で、指を失い、左足をやられてしまう。総攻撃に加われず、手榴弾一つと竹槍を与えられ、置いていかれる。重症のまま戦場を三ヶ月にわたってさまよう。。。

 死を覚悟して敵前に身をさらし、爆弾や鉄砲弾による直撃弾などで戦死するものの多くは「天皇陛下万歳!」と一声上げて果てた。重傷を負った後、自決、あるいは他決で死んでいくものは「おっかさん」と絶叫した。負傷や病で苦しみ抜いて死んだ者からは「バカヤロー!」という叫びをよく聞いた。「こんな戦争、だれが始めた」と怒鳴る者もいた。
 豪内では、たいがい「おっかさん」と「バカヤロー!」であった。

 (硫黄島で死んだ仲間たちの死に)どんな意味があったか、それは難しい。でもあの戦争からこちら六十年、この国は戦争をしないですんだのだから、おめえの死は無意味じゃねえ、と言ってやりたい」

 私の祖父はパラオ島で亡くなっている。不遜ながら、私も先人たちに「無意味ではない」と、申し上げたい。
 無意味にしてはいけない。