あの戦争は何だったのか―大人のための歴史教科書

あの戦争は何だったのか: 大人のための歴史教科書 (新潮新書)

あの戦争は何だったのか: 大人のための歴史教科書 (新潮新書)

 いわゆる「軍部」が太平洋戦争において、いかなる役割を果たしたのかをなぞる本。
 この本ではっきりすることは、日清、日露戦争の勝利による世論の後押しから軍人が政治の中枢を牛耳ってしまい、2・26事件のテロによって冷静に戦況を捉える人物が排除されてしまったということだ。戦術はあっても戦略はない。場当たりの戦闘を繰り返すことはできても、戦争をはじめる目的、そしてどうなれば勝利なのか、負けるのならどのように終わらせるのかという見通しは、会戦時も、戦争中も、皆無に等しかった。
 この戦争から浮かび上がる、日本人の国民性も、この本のテーマだ。「一億玉砕」などというスローガンにまい進するかと思えば、占領後は「アイラブマッカーサー」。やっぱり場当たりの猪突猛進。幸せになりたいという思いは強くても、どうなれば幸せになるのか分かっていないんだよな。
 あと、この本もまた「こういう言葉も誤解を招くかもしれないが、あえて使わせてもらうと」と断った上だが、「原爆のおかげで終戦は早まった」と書いている。歴史を語るということは、当人の意図があろうがなかろうが、どうしても中立ということではありえないのかもしれない。