グレンラガン再考

天元突破グレンラガン 9 (最終巻) [DVD]

天元突破グレンラガン 9 (最終巻) [DVD]

 このアニメには、日本のロボットアニメの歴史をなぞり、総括する意図が見え隠れする。アニメの主人公たちが闘ってきた「敵」。それは時には父親の姿をとったりもしたが、己を抑圧し、支配しようとする理念であるということだ。「お前のために」という庇護の名目の下に、厚い壁となって若者を閉じ込める。パターナリズムそのものが、ロボットアニメのラストボスであったということだ。
 そして、この作品は、パターナリズムに重ねて、「犠牲なくして幸福は得られるのか」という問題を取り上げる。それは第五話に登場するアダイ村のマギン司祭の物語がモチーフとなっている。

マギン
声 - 中田譲治
アダイ村の村長。地下に置かれていたガンメンを守り神と定め、村全体の掟となる宗教を作った事から「司祭様」と呼ばれており、村人から尊敬されていた。村人の数を50人と定め、クジ引きで選ばれた者を地上に送る*1など(クジには予め細工が施されており、身寄りの無い者を優先的に送り出す様に仕向けている)、時に残酷とも言える判断を容赦無く下す。常に厳格な態度を崩さなかったが、内心では貧しい村を維持する為とはいえ、そうした自分の行いに胸を痛めていたようだ。ロシウが村を出る間際に自らの胸中を吐露し、彼に教典としていた書物を託す。名の由来は「欺瞞」。

 ウィキ「天元突破グレンラガンの登場人物」
 ドストエフスキーカラマーゾフの兄弟」に登場する大審問官を思い起こさせる。そして、この物語は枯渇するエネルギー、人口爆発、われわれの未来を暗示している。とめどもない欲望によってエネルギーを奪い合えばカタストロフが待っている。協調し、成長をコントロールするしか人類を永らえさせる道はない。ただし、その方法は抑圧や強制であってはならない。あくまで「自分の未来は自分で決める」ということが、このアニメでは主張されている。
 さて、ラストボスと戦う主人公シモンは、勝利を収めたように描かれている。しかし、シモンもまた、地球を守るため、大多数を守るために、恋人ニアを犠牲にする道を選択していた。*2 結局、なにかを守るためには、大切なものをみずから犠牲にしなくてはならないこともあると言われているようで・・・
 アニメなのに、夢がない。
 

*1:地上で人間は殺戮されていた

*2:最愛の人と地球の両方を失わない方法は、実は存在した。それはアンチスパイラル族との協議、共存の道である。