若者たちの神々―筑紫哲也対論集

若者たちの神々―筑紫哲也対論集〈1〉 (新潮文庫)

若者たちの神々―筑紫哲也対論集〈1〉 (新潮文庫)

朝日ジャーナルは読まなかったが この対論集はむさぼるように読んだ
遠いところにあったアカデミズムというものを
様々なジャンルと複合させて とても身近なところに持ってきてくれた人だった
以前はNEWS23を 毎晩のように見ていたが このごろは 見なくなってしまっていた
あの頃とは わたし自身が 変わってしまったのかもしれないけれど
筑紫さんのことは 忘れないでいたいと思う
そのために最後の多事争論を ここに記録しておきます

ニュースというのは、とにかく「これが初めて」ということを強調したがるものでありますが、18年半前にこの番組が始まる時に、プロデューサーは記者会見で番組について「2つの史上初がある」と強調いたしました。

1つは「ニュース番組に個人の名前が付いたのが、この国では初めてだ」と。もう1つは「その私がキャスターだけではなくて編集長を兼ねている。これも初めてだ」と言いました。

来週から(3月31日)の番組リニューアルで番組名から私の名前が消えます。そして私は編集長でもなくなります。

そういう場合、普通は18年半を振り返って大特集をやるとか、あるいは、この番組のために生まれた名曲、「最後のニュース」を井上陽水さんに来て唄ってもらうとか、ひと騒ぎをするものであります。しかし、それをやりません。スタジオでの花束贈呈もありません。

なぜかといえば、番組が終わるわけでもなく、私がいなくなるわけでもないからであります。もちろん毎日の番組は、私の後継者である後藤キャスター、それに膳場さん、三澤くん、出水さん、岡山さんを中心に進めます。私は体力の許す範囲、そして番組にとってプラスになると思える範囲で、これからもこの番組に関わっていきます。

そんなことより、むしろ変わらないのは、長い間みなさんの支持によって作られたこの番組のあり様であります。それを私たちは「ニュース23のDNA」と呼んできました。

力の強いもの、大きな権力に対する監視の役を果たそうとすること、それから、とかく1つの方向に流れやすいこの国の中で、この傾向はテレビの影響が大きいんですけれども、少数派であることを恐れないこと、多様な意見や立場をなるだけ登場させることで、この社会に自由の気風を保つこと、そいうことが含まれています。

それを実際に、すべてまっとうできたとは言いません。しかし、そういう意志を持つ番組であろうとは努めてまいりました。この18年間、人は変わったんですけど、そのことでは変わりはありません。同じようにこれからも松明は受け継がれていきます。

この18年間の間、どうして番組が生き残れたんだろうかということをこの際、私は改めて考えてみたんですけども、やっぱり1番の理由は、やはりご覧にいただいてるみなさまからの信頼感の支えが大きかったと思います。

どうぞこれからも変わらぬ、変わらずニュース23をよろしくお願いいたします。