アースシーの風 ― ゲド戦記V

アースシーの風 ― ゲド戦記V

アースシーの風 ― ゲド戦記V

ゲド戦記のシリーズを読み始めたのは、エヴァンゲリオンに影響を与えたとか聞いたからじゃなかったかな。それでも、学生の頃、ナルニア国物語(もうすぐ、映画化されるらしい)が好きだったし。こんなオレでも、なんとなく純粋無垢なファンタジーの世界に縁がなくもないわけだ。
Ⅰの主人公ゲドが、Ⅱではテナーという女性の視点から男性として描かれ、Ⅲでは若者の視点から老人として描かれたのが興味深かったのだが、帰還―ゲド戦記最後の書 (ゲド戦記 (最後の書))で中年になったゲドとテナーがベットインする展開に、ファンタジーといえばけがれなき少年少女が読むものだというオレの古い固定概念が、壊されたことでありました。
Ⅴに関して言えば、解説にもあるように、古い因習に縛られているとして否定的に描いていた異文明を、書き改めなければならないと、作者は考えたのであろう。9・11に顕在化した文明の衝突を問題視して、文明/未開という二項対立を脱構築して再結集したと、想像する。
この作者は、作品を固定したものにせず、「性差」「老い」「文化相対主義」と、時代社会に次々と露呈してきた課題で再検討して、そのたび作り直している。そういう手法に、共感した。