北京ヴァイオリン

登場人物の心の動きがすんなりと受け入れられる、私の感性に合っている作品だった。
ただ、教授が主人公のヴァイオリンを密かに購入してしまう心理だけが、よく理解できず、気になった。彼はなんのためにあんなことをしたんだろう?
いろいろ考えてみた。そして、ヴァイオリンは親子の絆を象徴しているからかもしれないと、思いついた。捨てられていた主人公の、唯一の生まれの手がかりではあるのだが、二人の親子関係が始まったときからヴァイオリンは二人と共にあったのであり、二人の人生そのものがヴァイオリンだったともいえる。そう考えると、教授がヴァイオリンを隠したのは、親子を引き離し、他人にしてしまうことが目的だったということになる。

ヴァイオリンが帰ってきて、主人公は世界コンテストへの出場を捨て、育ての父のもとに帰ることを選択する。しかし、こういう終わり方にしないこともできたと思う。教授のたくらみを知ったうえでも、あえて「出世」の道を選ぶという終わり方である。(なんとなくピンポン ― 2枚組DTS特別版 (初回生産限定版) [DVD]を思い出した。「北京ヴァイオリン」の選択は、ペコじゃなくて、スマイルに似ている。)

どちらの選択も、あり、だと思う。情を捨てて戦い続けるのもあり。情を大切にするのもあり。
どちらも、自分に素直な生き方、なんだよな。