アルジャーノンに花束を

アルジャーノンに花束を (ダニエル・キイス文庫)

アルジャーノンに花束を (ダニエル・キイス文庫)

息子の現国の課題だった本。あいつも、こんな本を読むようになったか。
でも、読む気になったのは、攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX The Laughing Man [DVD]タチコマが読んでいたからだったりする。
読み始めたらもう、一気に、最後まで、読みきった。

知的障害者に対する差別の現実を、とても深く描いている。主人公チャーリーが最後に行き着く場所として取り上げられている、ウォレン養護学校精神科医ブラックジャックによろしく (12) (モーニングKC)に出てくる医師を連想させる。差別心に立ち向かう方法を現実的に提起して、それを促す思想的基盤のようなものを、読者にアピールしているのだ。

この本に登場する女性たちは、知識を持つということは、必ずしも人を幸せにはしない。失うものの方が大きいということを諭す役割をしている。「高いIQをもつよりもっと大事なことがあるのよ。」と。(ちょっとステレオタイプ
しかし、チャーリーがそうであるように、この言葉が意味することは理解できても、それをすんなり受け止めることは、だれでもできるものではない。(「愚禿」と名乗った親鸞のように、知識や知性を中心とする学びに対して問題意識を持ちたいものだ。難しい経論を使いつつも「教行信証」は、「ただ信を要とすべし」ということを明らかにしようと書かれている。しかし、読むものは、言葉の難解さに目を奪われ、知識に捉われ、酔わされてしまう。というか、易行ということに納得すること自体が難行だったりもする。)そして、知性が崩れ落ちていくという身の事実に逆らえない結末は、惨い。フィクションだけど、この本は、ほんまにリアルに書いてあると思う。

チャーリーは、自分が何者であるかを知り、家族と再会し、そして再び友達のいるかつての自分の居場所に帰っていく。手術を受ける前とは変化があったようだ。が、このお話は、本当に、ハッピーエンドなのか、気になる。