ある子供

ある子供 [DVD]

ある子供 [DVD]

 若いころ、私は命の尊さがさっぱりわからなかった。世の中はなぜ、こう合理的に動いていないのか馬鹿らしくて、他人が全員馬鹿に見えてしょうがない。人間なんて生まれて死んでいくだけじゃないか。それがなんだってんだ。なにかニヒルというか、醒めているというか、そういう人間だった。
 若さゆえに、親にも迷惑をかけた。そんなとき、親というのはなんでこうもオレのことをしつこく心配してくれるのか不思議だった。なんでそこまでやってくれるのか、怒りをぶつけたこともあった。それなりに好きな人ができたりして、それが彼女と付き合うなかで、大切にしようとしていたはずなのに彼女を苦しめることがあったりして、初めて必死に他人の気持ちを分かろうとしたりもした。結婚して、子どもが生まれて、世間がどう見ようとも、オレは絶対にこの子の味方であり続けようと誓ったこともあった。ホンマに、これまで、いろんなことがあった。
 この映画の主人公は、若いころのオレだった。彼とオレを重ねてしまって、涙がでた。
 とにかく、とてもいい映画だった。とにかく、見に行ってよかった。