文壇アイドル論

文壇アイドル論

文壇アイドル論

 文芸畑の著名人たちを生み出した読者たちの視点を、その文芸に対する評論を手がかりにして分析する。「人は見た目が9割」なんて本も出てるが、なんで彼(女)らはウケタのかを調べていけば、それがそのまんま、作品世界の本質だったりしてしまうわけだ。
 一番最初が村上春樹。じつは、わたしなんかもデビュー作「風の歌を聴け」からずーっと彼の作品を読んできたものだから、なんだか懐かしく斎藤の分析を読んだ。いろいろな謎解きを呼び起こすような文体であるだけで、内容はそう新しいものでもないということだった。それでも村上の一つ一つの作品には学生時代が重なっていて、思い入れが深いというか。斎藤の分析以上のものがあるように思うんだよなー。
 そして、俵万智吉本ばなな林真理子上野千鶴子が続く。彼女らがどのような支持基盤をもってアイドルとなりえたのかの分析は、それぞれに、なかなかに面白かった。
 次に、立花隆村上龍。二人がどんなに情けない女性観をもっているかというのがとっかかりなのだが、そこから二人の「稚拙さ」を容赦なくあぶりだしていく。なかなか手厳しいが、最後の田中康夫は意外に評価されていたりする。
 文芸批評の分野には、まったく興味がなかったのだがそれなりに最後まで読み終えることができた。