バス174

バス174 スペシャル・エディション [DVD]

バス174 スペシャル・エディション [DVD]

 先日のNHKスペシャルで、南米に左翼政権が次々に誕生し、アメリカとは一線を画そうとする政治動向があることを知った。新自由主義といったグロバール競争主義では途上国が一方的に搾取されるだけで、国内の貧困問題がますます深刻化し格差社会を助長するという反省が、社会主義への回帰に向かわせたのであろう。
 特にブラジルは、さとうきびからエタノール醸造アルコール燃料として活用する技術を実用化し、農場と工場を組み合わす計画都市によって、貧困層のスラムへの流入を止めているという。環境問題と貧困問題を複合的に解決する方途を見出したのだ。
 この映画は2000年にリオデジャネイロで起きたバス人質事件を追ったドキュメンタリーであるが、犯人の半生やブラジル社会の抱える問題を辿ることにより、事件の本質がどこにあるのかを描いたものである。
 映画によって再構成された事件の内容とその結末は、あまりにも哀れである。しかし、その本質を明らかにし得たジャーナリズムの存在は、ブラジル社会の未来に、さらに希望を持たせてくれるように思える。
 ブラジルが、うらやましくなった。