白いカラス

[スマイルプライス] 白いカラス Dual Edition [DVD]

[スマイルプライス] 白いカラス Dual Edition [DVD]

 ドイツのノーベル賞作家ギュンター・グラス氏が、17歳のときナチス武装親衛隊に入隊していた事実を告白した。カムアウトは名誉剥奪などリスクを背負うことだ。この状況ならできるという計算もあったことだろうが、自分自身の何かを隠して生きていくということに、様々な思いがあったということも想像する。
 この映画では、アフリカ系の家族の中で一人白い肌をもって生まれてきた人物が取り上げられている。
 白いカラスのように黒人社会でも奇異に見られ、就職や結婚では人種差別を被る。そこで、彼は家族と縁を切って、白人として生きていこうとするわけだ。
 spook(幽霊)という言葉がキーワードになっている。アイデンティティが不確かな彼のことを暗喩しているのかもしれない。結局、恋人にだけ中途半端に出生の秘密を告白し、どうもはっきりしない形で死んでしまう。
 よくあるカミングアウト、自分の言えなかったことを激白し、上司とかを一発殴って(?)、私は私でよかったぁああーと青空に向かってむやみに明るく叫んでストレス発散するようなストーリーではない。だから、アンソニー・ホプキンスニコール・キッドマンといった俳優さんは出ているけれど、映画としてはあまり面白くない。DVやPTSDなども取り上げているが、私には意図が分らないシーンが多かった。
 しかし、何かを隠して生きている日常が、描かれていた。