島比呂志―書くことは生きること

島比呂志―書くことは生きること (鹿児島人物叢書 (3))

島比呂志―書くことは生きること (鹿児島人物叢書 (3))

 自叙伝や私小説というのはどうしたって自分をどこか美化しているということがある。
 他人が著名な人物について書いても、偉人や英雄にしてしまうことが多い。
 しかしこの本は、島さんの限界や弱い面もしっかりと記している。著者はこういうことが書けるような、深い人間関係を結んでいらっしゃったんだなと思った。
 そのおかげだろう、読んだだけなのだが、お会いしたことのない島さんという人そのものに、触れたような気持ちになった。
 「らい予防法」国賠訴訟に勝利した後、療養所を出て晩年を過ごされたが、とうとう故郷に帰られなかったことを初めて知った。
 かけがえのない生涯を読み終えて、個人の歴史に出会うことの大切さを改めて感じた。