枕草子

 美術や庭園、自然を眺めて、この頃、いいなぁと思うようになったように思う。
 それで、この本の世界に入っていけるようになったかなと、読み始めたのだが。

 にげなきもの 下衆の家に雪の降りたる。
 また、月のさし入りたるも、くちをし。

 この一文を読んでしまったら、もう受け入れらなくなってしまった。
 時代や環境ということがあるし、この文だけが「枕草子」のすべてではないし、物事はすべていい面だけでできているわけでもない。もちろん私も限定された価値観でしかものを言えていない。
 けど、やっぱり、途中で読めなくなってしまった。

 清少納言が仕えた中関白家の栄華は一年半に過ぎず、勢力争いに敗れてあっという間に凋落してしまったという。「枕草子」には雅な貴族の世界が綴られているが、宮仕えを終えてから書かれているのに、そんな哀れな部分については触れられていない。
 なぜだろう?
 晩年、京都郊外でひっそりと暮らしたという彼女は、どういう心持でいたのだろう?

 書かれていない、彼女の思いが知りたくなった。