占領下パリの思想家たち―収容所と亡命の時代

占領下パリの思想家たち―収容所と亡命の時代 (平凡社新書 356)

占領下パリの思想家たち―収容所と亡命の時代 (平凡社新書 356)

 第二次世界大戦開戦前夜において、フランスのナチスに対する危機感は非常に薄いものであった。首都パリの陥落、そして実質的なナチの傀儡政権となっていくヴィシー体制の成立、全国土の占領という状況まで一気に。ロンドンに亡命したドゴールによる自由フランスが徐々に力を発揮し、レジスタンスも開始されるが、占領下パリの民衆、そして思想家たちは、親ナチ、反ナチ、そして傍観の狭間で揺れ動いた。
 たとえばアメリカに亡命したサン・テグジュペリ。「戦う操縦士」が戦う文学として評価されるが、ドイツによる全面占領を容認するような発言をしたために批判を受け、前線へ志願。消息を絶つ。
 この本のなかで一番目立っているジャン・ポール・サルトル。戦前はほとんど政治的な活動をせず、戦中、レジスタンスに加わろうともするが、あまり大したことができたわけでもない。それが戦後、コラボ(内通者)、消極的協力に対する激しい批判を展開する。あんまりかっこは、よくない。
 ナチを体験し題材とした哲学、文学を著した人物たち。後世に偉大な作品と評価されているが、その背景には、占領という現実に、揺れ動されざるをえなかった自身の人生があったということを、改めて学んだ。