仏教と日本人

仏教と日本人 (ちくま新書)

仏教と日本人 (ちくま新書)

藤場俊基氏が仏教を「対等・平等」と捉えたのに対して
阿満利麿氏はそれを「慈悲」として捉える
そして「権威」といった性格をもつ神道の上に「慈悲」の教えが浸透し
日本独特の信仰体系を作り出したことを、民俗学的史料についての考察を手法として明らかにする
この本によって、現代日本の仏教、特に肉食妻帯を宗風とする浄土真宗の形態をそれなりに説明することが可能になるわけだが
そうしたことを著者は望んでいない
著者は仏教徒、とりわけ僧侶の「便宜主義」
共同体意識に依存して主体的決断をしない、「平板な人間観で足揃えして、集団の和をはかる傾向」
精神的横着さを厳しく指摘する

 私がいいたいことは、たとえば、前の一五戦争下における日本兵の想像を絶する残虐行為である。慈悲が浸透したはずの日本社会の伝統にもかかわらず、こうした行為が生じたのはどうしてなのか。仏教は、肝心のところでは生きてはいなかったということなのか。 

仏教徒はなぜ、戦争を止められなかったのか この指摘は重い