Lost Tern

ロスト ターン

ロスト ターン

「居場所」とか「本当の自分」とか「幸福」とか
探し続けるべきものとして揚げられる
キーワードみたいなものをめぐって いろいろ考え続けるわけだが
たとえば「幸せの青い鳥」などは 鳥を探し続ける旅の果て
帰ってみれば 青い鳥は 日常のすぐそこにいたオチなんだが
さらに メーテルリンクの戯曲だと その鳥はまた飛び立っていってしまう
生活ってのは これまたぬか喜びの繰り返し ということか


この本は迷い鳥の話で 旅の果てに故郷に帰ることはできたけれども
それなのに そこにアイデンティティみたいなものは見出すことはできなくて
さらに また どこかへ一人 旅を続けていく
でも それは「迷い」というわけではなくて
そもそも生きているということ自体が 諸行無常 ということのようだ

この世でいちばん価値あるものは なんだと思うかね
それは永遠に手に入れることのできないような世界なんだよ
現実に所有できるものは すべて簡単に失われてしまう
星の光のように この手でつかむことのできないもののなかにこそ
人生を価値あるものにしてくれる秘密があるのさ

諸行無常であっても 人生が思い通りにならなくても
なにか願いみたいなものを追って 生きていくというのが
「生かされる」という表現になるのかもしれない